境界性パーソナリティ障害

パーソナリティ障害とは

パーソナリティ障害は、世間一般から著しく偏った行動や認知・感情・対人関係などが日常生活において支障をきたし、それが持続的であるときに診断されます。
症状は種々あり、パターンによって分類されますが、基本的に他者との人間関係やストレスへの対処が困難で、本人の自己像が不安定であり、客観的認識とのずれが生じます。

境界性パーソナリティ障害とは

境界性パーソナリティ障害(BPD:BorderlinePersonalityDisorder)はパーソナリティ障害の一種です。
人間関係における拒絶や別離・喪失の可能性に対する過敏性を特徴とし、気分や行動の不安定性、衝動性や苛立ちを示します。

境界性パーソナリティ障害の人口有病率の中央値は約1.6%(時に5.4%を示すケースも)とされています。一時医療場面では約6%、外来受診者では約10%、入院患者では約20%と言われています。
境界性パーソナリティ障害を発症要因として、成人期早期の慢性的不安定さが原因と言われていますが、それ以外にも遺伝子と環境要因が関わっている可能性があります。

一部の人は、生活上のストレスに対しうまく反応できない遺伝的な傾向があると言われています。そういった人の場合、境界性パーソナリティ障害を発症する可能性が高まる場合があります。
また、境界性パーソナリティ障害は家族内で受け継がれる傾向があり、境界性パーソナリティ障害患者の第1度近親者は一般の人と比較して、発症の可能性が5倍高いと言われています。

環境要因として、幼児期のストレスが境界性パーソナリティ障害の発症に関わっている可能性があります。
アメリカでは境界性パーソナリティ障害患者の91%が小児期に外傷体験を持っていたという調査結果が出ています。
幼少期の身体または性的な虐待、両親または片親との離別経験、養育者の支配的・過干渉・過刺激的・非共感的なケースが多くみられます。

境界性パーソナリティ障害の診断

境界性パーソナリティ障害は基本的に成人早期までに始まりますが、ときに青年期に生ずる場合もあります。

診断に際しては下記の9項目のうち5つ以上当てはまることが基準となります。

  1. 現実または想像中で見捨てられることを避けるためなりふり構わない努力を示す。(5の自殺・自傷行為は含まない。)
  2. 不安定で激しい対人様式。相手の理想化と低評価の両極端を揺れ動くことにより特徴づけられる。
  3. 同一性の混乱。明らかかつ持続的に不安定な自己像または自己意識を示す。
  4. 自己を損なう衝動性。浪費・性行為・物質乱用・無謀運転などのうち2項目以上が当てはまる。(5の自殺・自傷行為は含まない。)
  5. 自殺の企図・素振り・脅し、または自傷行為を繰り返す。
  6. 顕著な気分反応性の感情的不安定性。数時間ほどの不快感・苛立ち・不安感。(数日持続することは稀である。)
  7. 慢性的な空虚感がある。
  8. 不適切かつ激しい怒りや、その制御の困難。
  9. ストレスに起因する一過性の妄想的思考、または重篤な解離症状がある。

具体的な特性

  • 見捨てられることへの恐怖
  • 差し迫った別離や拒絶を認識、あるいは想像することにより、自己像・感情・認知・行動に大きな変化が起こる場合がある。
    周囲の状況に過敏に反応し、出張や旅行といった短期の場合や家庭・職場の事情といった致し方のないケースであっても恐怖心や怒りを覚える。
    その後、そのことに対する罪悪感や羞恥心から自己否定に陥いることも。
  • 対人関係
  • 親密ではない相手に対しても理想化した関係を思い描き、相応の要求をしたり詳細を知りたがる。
    一方で評価が極端に変化し、相応の見返りが得られていないとして憤る。
  • 自己像の劇的な転換
  • 価値観・意見・計画などが急激に変化する。
    学校や職場で組織立っていない状況では、作業能力が悪化するなどの影響がある。
  • 衝動的行動と自傷
  • 他人から拒絶されたり距離を置かれていると感じた時、あるいは責任が大きくなるなど強いストレスを感じる状況下で自己破壊的行為を行なう。
    境界性パーソナリティ障害患者の自殺リスクは一般より40倍高く、自殺を企図していなくとも患者のうち8~10%は実際に死亡してしまう。
  • 不快気分
  • 怒りやパニック・絶望の期間が現出することにより心がかき乱され、不安定になりやすい。
    対して、幸福・満足な期間によって気分が和らぐことは少ない。
    慢性的な空虚感を感じたり、飽きを感じやすい。

境界性パーソナリティ障害の治療法

認知行動療法など、主に精神療法による治療を行ないます。
認知行動療法は、患者と治療者が共同で患者の見方・物事の認知の仕方を検証していきます。他の考え方について一緒に考え、悲観的・非現実的な見方を修正する手助けを行います。
気分の落ち込みや不安感・情緒不安定などといった症状に対しては、抗うつ剤や抗不安薬などを用いる薬物療法を行なう場合もあります。

原則として、現在の苦痛を緩和し、問題の原因を認識する支援を行ない、不適切行動を減少させ、困難の原因となるパーソナリティ特性を是正することを治療目的とします。

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