適応障害
適応障害とは
適応障害は、特定の環境・出来事に対してストレスを感じることから心身に様々な症状が現れ、社会生活に支障をきたすストレス性障害の一つです。
適応障害のストレス因は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)でみられるような圧倒的な外傷的出来事である必要はなく、学校や職場環境、人間関係などの日常生活においても起こり得ます。
適応障害の症状
適応障害の症状は、人によって異なります。ストレスや状況、また本人の性格など要因によって様々ですが、主に以下の状態に大別されています。
- 抑うつ気分
- 気分の落ち込み、意欲低下、喪失感、泣きたい気分になるなど
- 不安症状
- 動悸や息切れ、苛立ち、焦燥感、神経過敏、緊張など
- 身体症状
- 不眠、頭痛、眩暈、倦怠感、腰背部痛、腹痛など
これらの症状のいずれか、あるいは複数の症状が混合した状態となって現れます。
適応障害の診断
アメリカ精神医学会が出版している「精神疾患の診断・統計マニュアル」によると、適応障害の診断基準は基準は以下のようになります。
- はっきりと確認できるストレスが発症の原因であり、ストレスを受けてから3か月以内に情緒面、行動面で症状が発生すること。
- ストレス因に対して不釣り合いな著しい苦痛があること。
- 症状により学業や仕事、社会生活において著しい損害があること。
上記以外にも、うつ病や統合失調症などといった精神障害が症状を引き起こす原因ではないこと、ストレス因の解消から6ヵ月以内に症状が改善することなども診断基準となります。
適応障害の治療
適応障害は時間経過により自然に軽快することもありますが、症状の慢性化やうつ病などへの進行、自殺傾向の増加と関連している可能性も指摘されています。
そのため、しっかりとした評価と治療計画が求められます。
軽度な症状に対しては環境調整により改善がみられる場合もあります。しかし、家庭や仕事上の問題など、ストレス因によっては難しいケースもあるため、心理療法や薬物療法による治療も並行して行ないます。
- 環境調整
- 食事や睡眠の改善といった生活指導を行なう。
- 過重労働をなくし、負荷を軽減する。
- 家族や職場の人間に対して状況説明を行ない、環境改善への協力を得る。
- 心理療法
- 心理的苦痛が軽減する思考方法と対処行動を身に着け、気分のコントロールを図る。(認知行動療法)
- 気分をあるがままにとらえ、建設的な行動に繋げていく。(森田療法)
- 問題に対して考えられる有効な解決策を挙げ、最も有効な手段を見つけ出すトレーニングを行なう。(問題解決療法)
- 薬物療法
- 睡眠薬治療による不眠改善。
- 抗うつ剤による不安・抑うつ症状などへの対処。
適応障害の治療における薬物療法は、あくまでも対症療法として行なわれ、根本的な治療にはなりません。
ですが、症状を緩和することで心身の負担を軽減し、ストレス因からの回避を最小限にとどめる点で有効です。