パニック障害

パニック障害とは

パニック障害は、激しい呼吸困難や心臓の動機、眩暈、吐き気などといった様々な身体症状を伴う発作症状(パニック発作)を特徴とします。

パニック障害になると、発作が起こっていない状態でも発作を恐れる予期不安や、一人で外出できなくなる広場恐怖、他の不安障害やうつ病などを併発するなど、慢性的に経過する恐れがあります。

パニック障害の症状

パニック障害の中心的な症状は、強い不安症状が急激に現れるパニック発作です。
パニック発作は不意に始まり、10分以内にピークに達し、ほとんどの場合は30分前後で収まります。

パニック発作の症状には以下のものがあります。

  • 激しい動悸・息切れ
  • 恐怖心や不安感による発汗
  • 手足の震え
  • 口内や喉の渇き
  • 息苦しさ・窒息感
  • 腹部の不快感・吐き気
  • 眩暈・貧血感
  • 全身の痺れ・疼き
  • 肩凝り・腰痛
  • 離人感・虚脱感
  • ...など

強い不安感や恐怖心から取り乱したり、動悸や震えといった強い身体症状も相まって、強く死を意識したりもします。

パニック発作には、繰り返し起こるという特徴があります。

予期不安

パニック発作は繰り返す特徴があることは先に述べました。
最初の発作から次の発作まで、大抵は数日から数週間の間がありますが、連日起こる場合もあります。2回目の発作の後は、比較的短期間のうちに連続して発作が起こります。
発作を繰り返していく中で、発作が特定の状況と結びついたものになっていき、パニック発作が起こりやすい状況がつくられていきます。

パニック発作の恐怖を体験することで、再び発作が起こるのではないかと不安になり、その不安が次の発作を誘発する悪循環に陥いることを予期不安といいます。

広場恐怖

広場恐怖は、予期不安が高じることで、パニック発作が起こりそうな状況や場所を回避するようになる状態です。
広場恐怖の広場は広い場所という意味ではなく、人前や公共の場など、逃げ隠れ出来ないあるいは助けを求められない場所を指します。

パニック障害の人の80%以上が、程度の差はあれ広場恐怖を抱くようになります。
人によっては恐怖する対象が拡大していき、外出が不可能になるといったケースもあります。
また、広場恐怖によって依存的になり、一人で家にいられなかったり、外出の際に親しい人間の同伴が必要になるなど、本人や周囲の人間も含め、日常生活に支障をきたします。

こういった極端な広場恐怖の場合でも、大半の人は次第に不安や恐怖に慣れていき、行動範囲を広げていきます。
しかし、一度広場恐怖になった人の中には、パニック発作が消えた後も無意識のうちに行動を制限してしまうケースが少なくありません。

パニック障害の原因

パニック障害の原因についてははっきりと解明されていませんが、いくつかの仮説があります。
現在有力な説として、脳の誤作動が挙げられます。

人間の脳には危険を察知し、警告を発する仕組みがあります。
中でも大脳辺縁系の一部である偏桃体は情動の中枢であり、この偏桃体が危険を察知し恐怖感が呼び起こされると、その恐怖感は脳幹部の自律神経中枢核へと伝播されていきます。
すると興奮性の脳内物質であるノルアドレナリンが放出され、筋肉に血液を送り込んで心拍を早くしたり、血液を高めたりします。

しかし、偏桃体は敏感で不安定であるため、危険がないにもかかわらず過敏に働く場合があります。
それが自律神経を刺激し、眩暈や動悸などのパニック発作を引き起こすと考えられています。

パニック障害の治療法

パニック障害の治療の要点は、できるだけ早くパニック発作を消失させることです。
パニック障害の治療では、薬物療法が有効とされていますが、曝露療法などの心理療法も効果があります。

パニック発作は時や場所を選ばずに発症するため、発作が起こらない状態を保つことが大切です。
パニック障害の薬物療法では、SSRIなどの抗うつ薬やベンゾジアゼピン系の抗不安薬を用います。
SSRIは脳内の情報伝達物質であるセロトニンが、再度元の細胞に取り込まれるのを防ぎ、セロトニンの量を増やすように働く薬です。
日本ではパロキセチンとセルトラリンがパニック障害の適応薬として認可されています。
副作用が少なく、依存性もありませんが、効果が出るまでに時間がかかります。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は即効性があり、応急的に服用するなどの用途もありますが、副作用として眠気などを伴う場合もあり、また耐性や依存性があります。
薬物療法で注意する点として、自己判断で服薬をやめてしまうケースが見られますが、良いことではありません。
突然服薬を中断することで再発しやすくなったり、それまでの服薬量では効果が出なくなるなどの弊害があります。
またパニック障害は慢性化しやすく、残遺症状が固定化して一生続く恐れもあるため、完治するまで治療を継続する必要があります。

パニック障害の中で発生する広場恐怖に対しては、薬物療法は効果が無いとされています。
広場恐怖に対しては、心理療法による治療を行ないます。
曝露療法を用い、不安が生じる状況や環境に対して段階的に取り組み、慣れさせ、克服していくなどといった治療を行ないます。
また、リラクゼーション法の一つである自律訓練法を取り入れることで心身の緊張をやわらげ、心理療法の効果を高めることが出来ます。

それぞれの患者さんの症状に合わせ、段階的に適切な治療を行なっていきます。

HOME画面へ